仕事ってなんだ、10の心構え

新社会人にとっては、社会人始まったばかりなのに新型コロナウィルスでいきなり在宅勤務という状況だと思います。そんな状況に、私個人の仕事に関する価値観とそのベースになっている言葉を本棚から引っ張り出してきて、偉そうにまとめてみました。

もう少しマーケティングや分析よりの話題まで含めようと思っていたが、長くなってしまったので、別の回に。

 

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データサイエンティストというキャリアについて

10年前くらいはどちらかというとビッグデータというワードの方が飛び交っていたと思う。データサイエンスとかAIというジャンルは、ここ10年くらいの盛り上がりみたいなものだともいえる。既に盛り下がっている人もいる。したがって我々のロールモデルとなる、データサイエンティスト歴30年の人ってのはあんまりいないことになる。つまり、キャリアは自分で考えて切り拓いていくしか無い。

言えることとしては、データを元に経営判断をすること自体はなくならないだろう。しかし、データサイエンスもAIも目的ではなく手段に過ぎないということである。手段に過ぎないので、使うツールは勿論のこと、人との関わり方や企業における位置づけも、今後もドラスティックに変わり続けていくに違いない。我々もその変化に合わせて、謙虚に学び続けながらキャリアを常にmodifyしてadjustしていくしか無さそうだ。というわけで、何かのツールや言語を使いこなせることよりもその根底に流れる、仕事に対する正しい価値観みたいな方がよっぽど重要だと思っている。

 

1. 会社とは

会社ってなんなのか。

リンダ・グラットン(著) アンドリュー・スコット(著)『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』とかでも書かれているが、1つの会社に依存しすぎる時代は終わった。ちなみに私は会社は、途中まで行き先が大体同じ方面の、なんか乗り物くらいに思っている。

 

会社とは、「仕事」という商品の在庫をかかえたスーパーマーケットのようなものだと考えてみる。

~略〜

ワーカーが能力を売っているというより、会社が「仕事を売って」いるのである。ところで、私たちが会社から仕事を買っているとしたら、そこで支払っている対価はなんだろう。

それは「時間」である。そして時間とは、私たちの「いのち」そのものである。

 

西村 佳哲 (著)『自分の仕事をつくる』

 

さて、いま、クリエイティブではないオペレーションの部分、何かのやり方というか技術や体力労働の部分は、コンピュータや機械の登場によって、少しずつ人間がやらなくてもいいようになってきています。そこで、ぼくはポンペイの歴史研究の先生に

未来社会では、古代ローマでの奴隷にあたるのが、コンピュータになるんですよね」と訊いてみたのですが、

「いやあ、その頃の奴隷にあたるのは、いまのサラリーマンでしょう」と、さらっと言うんです。

 

糸井 重里 (著)『インターネット的』

 

2. できること、やりたいこと、やるべきこと

やりたいことが、よくわからないって人は多い。そもそもそれを考えていないこともあるだろう。

仕事は、できることなのか、やりたいことなのか、やるべきことの枠組みで語られることがある。この3つが重なっている領域の仕事は天職といわれる。若いうちは自分にとって仕事が、できることなのか、やりたいことなのか、やるべきことなのかは、いったんはどれでもいいだろう。私も、新卒のときはIT系伸びそうだなと思って、IT系に入った、それだけ。ただそれは、いずれ整理しなければならない時がくる。

 

20代なら、すべての仕事はいい経験として将来につなげることができます。しかし、30代以降も嫌いな仕事を続けていては、その人の大切な部分が蝕まれていくでしょう。

あなたのためにも、家族のためにも、職場の人のためにも、お客さんのためにも、仕事を変えたほうがいいでしょう。

 

本田 健 (著)『30代にしておきたい17のこと』

 

私は新入社員の入社式でいつも次のように言うことにしている

「君たち、ソニーに入ったことをもし後悔するようなことがあったら、すぐに会社を辞めたまえ。人生は一度しかないんだ」

 

盛田 昭夫

 

3. そのキャリアに市場価値はあるか

一般的に、会社が10年後も存在している保証は無い。50年後も存在している保証はもっと無い。一生ぶら下がるつもりなら、もうちょっと大きい会社にした方が良いに違いない。そして、必死にしがみつくしか無い。30後半になって、一般的に通用するスキルが何も身についていなくて、転職すらできなくなってしまっている人を何人も思い浮かぶ。我々にできることは、いつ会社がなくなっても困らないよう、自分が世の中に対して提供できる価値を、常に磨いておくことだと思う。

 

事業の成否・損得について、ときどき自分の心の中でプラスマイナスの差し引きを計算してみることである。

~略〜

自分自身の有様を明らかにして、今後の方針を立てるものは、知性と徳と仕事の棚卸しなのだ。

 

福澤 諭吉 (著) 斎藤 孝 (翻訳)『現代語訳 学問のすすめ

 

従業員に定期的に他社の面接を受けることを奨励している。これは、うちの給与が他社と遜色のない水準なのかどうかを、最も効率的かつ確実にしる方法なのだ。

 

パティ・マッコード (著)『NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~』

 

少しでもインターネットに関わる業界にいる人、もしくはB to Cに携わる人であれば、デザインの視点や知識、心構えがあるかないかで相当な差が出てくるでしょう。特に若い読者の方々にとっては、いまからデザインを組み込んでBTCスキルを磨いていくことが選択肢のひとつとなります。

~略〜

いまはビジネス領域やテクノロジー領域のどれか一本しか知らないという人は、まずは自分の知らない分野のリテラシーを高め、他分野の言い分を理解することができるレベルの「耳」をつくることが重要です。

 

田川 欣哉 (著)『イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き』

 

4. 学ぶ

社会人になっても継続して学び続けていると、数年で簡単には追いつけない差をつけることができるらしい。私も本はなるべく読むようにしている。給料の1割を自分に投資するといいと読んだことがある。投資先は、本でもセミナーでもなんでもいいのだが、1割って意外と多くて、使うのは難しい。

 

「乱読よ。本は道具だからな」

秋山真之

 

古川 裕倫 (著)『仕事で大事なことは『坂の上の雲』が教えてくれた』

 

ウォーレン・バフェットの生活は極めて学究的なのです。彼が世界的な成功をおさめたのは、毎日、毎日、学び続けているからだと思います。

 

チャールズ・マンガー 他 (著)『巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ』

 

5. 時間はかけているってとき

時間をかけたかどうかは、クライアントにとってどうでもいい。価値あるアウトプットがすべて。もしもこの感覚がピンとこない場合は、個人事業をやってみるといいと思う。価値が無ければ当然、翌月、即切られるに違いない。

とはいえ、分析プロジェクトの場合、いただいたデータの理解や前処理、一次加工に結構な時間がかかることがある。それはそうである事実を説明すればいい。だけど、その段階で何の価値も生み出していないので、そこまでの作業自体に対価はもらえない。

 

「いいか、岩田。このラインの中で、付加価値を生み出しているのは、火花が散っている、あの瞬間だけなんだ。だからそれ以外、在庫管理をしたり、モノを動かしたり、打ち合わせをしたりするのはすべて無駄だという目で見ろ」

要するに、何をするにしても、本質的に付加価値を生み出している一番大切な瞬間を見逃すな、ということだと私は理解しました。

 

岩田 松雄 (著)『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』

 

多くのビジネスマンは、自らの「労働」をお金に換えているのではなく、 そこに費やす「時間」をお金に換えているのだ。

~略〜

そして積極的に稼いでいくために、自分は「時間」以外のなにを提供できるのか、もっと真剣に考えなければならない。

堀江 貴文 (著)『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』

 

6. アイデアがでてこないってとき

多分、インプットもアウトプットも足りてない。

なるべく、新しく日本上陸したブランドのショップに行ってみるとか、美術館にいくとか、美しい自然に触れるとかするといいと思っている。そうゆう見たものの中で、なぜか引っかかったモノが、どこがどう自分の中に無い感覚だったのかを、納得するまで深く考えてみるってことを、トップの経営者やデザイナーはしているらしい。それに比べれば、業務に関係ありそうな話題のみインプットするというのは、まだ楽かもしれない。

 

イデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。

 

ジェームス W.ヤング (著)『アイデアのつくり方』

 

実際にデザイナーと一緒にリサーチしてみるとわかるのですが、たいへん多くの情報をインプットします。時計の例でいえば、好きだと思う時計の写真をイメージ検索で50~100枚くらい集めることもザラです。

 

佐宗 邦威 (著)『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』

 

7. 求められているアウトプットが毎回ズレるなってとき

金曜の18時にダメ出しされこれから残業かよ、なんなら木曜はやや時間に余裕があったぜっていう、納得いかない状況。何かをお願いするときは、なるべくそうならないようにしたいと思っているが、いつまでに何のためにやるのか、のミスコミュニケーションかもしれない。

 

どんな場合でも、70%の正解率を出して欲しいと、私は考えています。なぜ70%の正解率かというと、70%の正解であれば、大きな方向性はできたも同然です。あとの30%は、たとえばグループのメンバーが集まって考えれば埋められます。それが70%の意味するところです。一方で、満点にこだわる人がけっこういます。芸術作品の創造ではないのですから、私は会社の仕事の場合、完全主義にこだわるのは、「時間と人材の有限性」を忘れることになりかねないと思うのです。

必要となるポイントとは、たとえば一本の樹木にたとえると、根の張り具合、幹の太さ、樹の高さなどです。枝の出方や葉の形などは不要だ、ということです。レポートの書式としてのまとまりや、誤字や脱字の存在は大目にみます。その代わり可能な限り早く、提出して欲しいと注文をつけます。

 

出口 治明 (著)『百年たっても後悔しない仕事のやり方』

 

8. やればやるほどこんがらがるってとき

体当たりで、いきなりデータを分析や可視化すると大抵うまくいかない。

やってもやってもいまいち結果がでないとか、やればやるほどこんがらがってくるんですけど、という状況に陥った場合、もしかしたら「犬の道」に迷い込んでいるのかもしれない。

 

これでは永遠に「バリューのある仕事」は生み出せないし、変化を起こすこともできない。ただ徒労感が残るだけだ。しかも、多くの仕事を低い質のアウトプットで食い散らかすことで、仕事が荒れ、高い質の仕事を生むことができなくなる可能性が高い。つまり「犬の道」を歩むと、かなりの確率で「ダメな人」になってしまうのだ。

 

安宅 和人 (著)『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」』

 

いずれの場合においても最も大切なのは、仮説を検証するために分析を行うということだ。闇雲に分析してから問題を整理するではなく、まず問題意識をもって仮説をつくり、それが正しいかどうかを検証することが、分析を行う正しい態度である。

 

内田 和成 (著) 『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』

 

「人の頭に上下などはない。要点をつかむという能力と、不要不急のものはきりすてるという大胆さだけが問題だ」

秋山真之

 

古川 裕倫 (著)『仕事で大事なことは『坂の上の雲』が教えてくれた』

 

9. そして楽しむ

私が新人のときの役員の話しに、お客様に感動してもらえるような仕事をしてほしいというのがあった。期待通りは満足であり、期待を超えることが感動と教わった。

クライアントは一般的に、社内の人材ではできないことを、社外の我々にお願いしている。そのプロジェクトで、クライアントが期待以上だと思ってくれた瞬間はやりがいを感じられるし、シンプルにこちらも楽しい。

生データにアクセスできる以上、社外の人間が短い期間でそこまでわかるのか、と思わせるチャンスはあると思っている。

 

ハウルの動く城』のときのこと。メインテーマの曲を決めるにあたって、僕は誰もが宮崎監督のアニメーションにぴったりだと感じるような曲を一つ用意した。一方で、これは世界観が違いすぎるかな、といくばくかの不安を抱えながら、僕自身はこれでいきたいと思うものを提案した。採用されたのは後者だった。正直嬉しかった。

 

久石 譲 (著)『感動をつくれますか?』

 

10. 仕事とは

最後に、ザ・仕事って感じの内容を。

 

何をやってはいけないでしょうか。そう考えれば答えは簡単ですね。「怠けること」「人からの信頼を失うこと」の2つです。信用を失墜するような行為をすれば、瞬く間に仕事で失敗してしまうことでしょう。どんなに素晴らしい信念を持っていようが関係ありません。

 

チャールズ・マンガー 他 (著)『巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ』

 

仕事を三割と位置づけると、仕事を疎かにすると解釈されがちです。むしろ逆です。三割でたいしたことはないのだから、思い切って自分の信念に基づいた正しい行動をとろうと考えられるはずです。人目や他人の評価を気にせず、自分に正直であればそれで十分。そう腹をくくれる人は、仕事が人生の三割にすぎないことがよくわかっているのです。

 

出口 治明 (著)『「働き方」の教科書:「無敵の50代」になるための仕事と人生の基本』

 

最後に

できているかできていないかは別として、私は仕事はこんなものであると捉えているという話でした。私は最近は全然違う本を読んでいますし、これだけ読んでおけば間違いないという本は無いですが、それでも『イシューからはじめよ』と『仮説思考』あたりは読んだほうがいいかと思います。

新型コロナウィルスによって、働き方と人々の消費が様変わりした今、多くの会社が当初の計画の修正を余儀なくされていると思われる。アメリカの諺に『When life gives you lemons, make lemonade.』というのがあるそうだ。いまの私たちにとってのレモネードはなんなのでしょうか。。